伊藤哲司の「日々一歩一歩」

ここは、茨城大学で社会心理学を担当している伊藤哲司のページです。日々の生活および研究活動で、見て聞いて身体で感じることなどを発信していきます。

この国のかたちのゆくえ

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 2014年7月1日、この国のかたちが大きく変わってしまう「大事件」がありました。言うまでもなく、憲法解釈を変更しての「集団的自衛権」の行使容認閣議決定です。首相官邸前では、前夜万単位の人々が抗議にために集まりデモを行いましたが、その夜のNHKニュースはそれを一切報じないという徹底ぶり。近頃つづいていたNHK会長らの数々の発言と見事に符合する、NHKらしい対応でもありました。

 この閣議決定がなされたからといって、すぐに戦争が始まるとはさすがに私も思いません。賛成意見には共感しませんが、そういう意見の人たちも少なからずいることもわかっています。しかし、これだけの懸念や反対の声が各方面から出されているにもかかわらず、与党だけの密室での会議で話が進み、そしてこの閣議決定に至ったということは、どう考えてもおかしい。せめて立ち止まって考えてみることが必要なのに、それをしない。こういうのを「暴走」と言わずして、なんと形容したらいいのでしょう。

 秘密保護法が承認された半年前もそうでした。安倍首相をはじめ閣僚たちの頭には「決められる政治」が最優先と思っているのでしょうか。自分たちは絶対に正しい。批判が強いのは、国民の理解が追いついていないからだ、と。そうえば閣議決定後のNHKニュースの大越キャスターは、意識してかせずか「国民の理解が追いついていない……」とポロッと口にしていましたね。そんなに「理解不足の国民たち」が反対の声を上げているとでも言うのでしょうか。

 どう考えても理不尽です。おかしいです。だって日本国憲法第九十九条には、「天皇又は摂政及び国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」とあるのですから。首相や官僚たちは誰よりも「この憲法を尊重し擁護する義務を負う」わけですから。

 しかし閣議決定はなされてしまいました。反対意見は聞く必要はない、憲法は尊重することはない、都合のいいように解釈してよいというメタメッセージを子どもたちにも発信してしまいました。私の中2の息子は、「ニュース見てたか?」と私からの問いかけに、「いかんね。だって国民の声を聞かないじゃん。上だけで決めちゃうなんてね。いやだねぇ」と話していました。我が息子、ちゃんと「理解」しています。

 ただ、これだけのことが起きているのに、身近な学生たちの関心があまり高くないように見えるのが気になります。どこかまだ他人事のような顔をしているように見えるのが、私の勘違いならいいのですが。授業では直接取り上げづらいけど、議論の場を学生たちとつくってみたいなとも思っています。さて応じる学生たちはいるかな?

 この国のかたちのゆくえが心配です。安倍首相は「抑止力」を強調しますが、やはりアメリカの戦争に巻き込まれる可能性が確実に高まったと言わざるをえない。一人の責任ある大人として、私なりに声を上げ続けていきたいと思っています。
 (写真は7月1日の新聞各紙。私のアパートにて)