伊藤哲司の「日々一歩一歩」

ここは、茨城大学で社会心理学を担当している伊藤哲司のページです。日々の生活および研究活動で、見て聞いて身体で感じることなどを発信していきます。

ハノイで過ごした濃厚な時間

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 7月25日から29日までの4泊、ベトナムハノイで過ごしました。短い滞在でしたが、今回もまた濃厚な時間を過ごすことができました。
 ベトナム社会心理学会での発表と、ベトナム社会科学院東北アジア研究所での講演が今回の仕事のメインでした。そのことを通してまた新たに出会った人たちもいましたし、これからさらにその縁が続いていくだろうと強く感じることができました。研究面でのつながりも、あらためてできていくことになりそうです。
 16年前にハノイで在外研究を行っていたときからのつきあいになるメンさん一家、その少し後に当時あった日本研究センターで知り合ったランさん、数年前に茨城大学に留学していたリンさんとハインさん、研究発表を手助けしてくれてドゥオンラム村にも連れていってくれたハノイ大卒のフオンさん、家族ぐるみ姉妹ぐるみのつきあいになりつつあるアインさん三姉妹、出産直後にもかかわらず会いにきてくれたタンロン大学日本語講師のミンさん、茨城大学が協定を結んでいてこれからまだ展開がありそうなハノイ科学大学准教授のドックさんと彼の学生のハンさんとその妹さん、ピザを一緒に食べにいったホアさんとリンさん、夜中遅れてやってきて独り身を私を心配してくれたかつての日本語の教え子・ハーさん……、まだ他にも今回会った人たちがいるし、今回は残念ながら会えなかった友人たちもいます。
 私が初めてハノイに行ったのは1992年。当時私は大学院生で、バックパッカーとしての一人旅でした。あれから22年。自転車社会だったハノイを歩いたあのときの私が、今のベトナムの縁の広がりを想像できたはずもありません。自分でもこの展開にはまったく驚くばかりです。
 でも私は、ベトナム社会がすべて素晴らしいなんて思っていないし、いろいろと気になることもあります。最後サイゴンでの乗り継ぎのわずかな時間に夕食をともにしたトゥイさんは、「伊藤さんの目から見て、今のベトナム人たちは率直にどう見えますか?」と問われました。やはり経済優先、拝金主義的な傾向が強くなってきていて、いわゆる格差の問題がますます深刻になっていること、そして人々のライフスタイルの変化で、運動不足や肥満の問題なども生じつつあるのではないかと話しました。そして、「そうした問題の多くは、すでに日本社会が経験したことであり、それらを解決したとは言わないけど、そうした日本社会の面もちゃんと見てほしいですね」と答えました。
 もちろん都市部でバイクや車があふれる交通問題も深刻。とても持続可能な都市にはなっていません。規制しようにも反対が大きくてできないとも聞きました。個人のエゴがギラっとも見える気がします。自分の利便性の追求が、全体の不利益に繋がるというジレンマに、どこかでベトナム人たち自身が気づく必要があるでしょう。
 「ベトナム」を通して日本の見返すことも、「ベトナム」を通して世界を見ることも、研究者としてもとても有益だと思っています。ベトナムの友人たちとの縁をこれからも大切に、さらに関わり続けていくつもりです。ハノイの路地が、やはり好きですし、そこからも世界の問題が見えてきますから。
 今回会ったハノイの皆さん、ありがとう。また必ず会いましょう。Hen gap lai !
(写真は、ハノイ駅南の線路。この線路は中国へと繋がっています。ということはヨーロッパまで繋がっているということですね。)