伊藤哲司の「日々一歩一歩」

ここは、茨城大学で社会心理学を担当している伊藤哲司のページです。日々の生活および研究活動で、見て聞いて身体で感じることなどを発信していきます。

ほとんどが理系の研究者たちの中で

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 東京大学などいくつかの大学が参加しているSSC(サステイナビリティ・サイエンス・コンソーシアム)の研究集会が、筑波にある国立環境研究所で開かれました。年1回開かれているこの会、今回は自分に発表する機会がまわってきました。参加するのは初めて。20~30人ぐらいの参加者があり、午前中は研究所の研究紹介。続いて施設見学がありました。資源ゴミの燃焼実験などが行われているプラントを見せてもらうことができました。

 もともと国立公害研究所として高度成長期に始まったこの研究所、実際に勤務している200数十人の研究者のほとんどはいわゆる理系で、「環境」というのはすなわち自然環境あるいは物理的環境を指すようでした。話を聞くと、もちろんそれぞれ精緻に行われた研究の成果があり、それはそれで興味深いのですが、あまりそこに「人間」の姿は見えませんでした。自治体の関わりを視野に入れた取り組みがあることはわかりましたが、せいぜいそれ止まり。やはり理系なんだなと思いました。

 午後から行われた研究発表会、私の発表タイトルは「人間科学の立場からみたサステイナビリティ学」。自然科学(理系)とあえて人間科学(文系)を対置させ、むしろ相手と関わって知を生みだしていくこと、そこでは対話が大事で、正しい答えが必ずしもないことを強調しました。さてどんなふうに受けとめられるかなと内心ちょっと不安に思っていたのですが、わりと新鮮に受け止めてもらえたようです。あとで行われた懇親会で、「琴線に触れるお話で……」と言ってくれた中堅の研究者もいましたし、茨城大学大学院に興味を持ってくれた若手もいました。単なるお世辞ではなかったと思います。

 文系っぽい話をしたのは必ずしも私だけではなかったのですが、こういう話はわりと理系の研究者たちにとっては新鮮なのだろうなと、あらためて認識することができました。と同時に、自分のやっていることに少し自信を抱くこともできました。いくら理系の研究であっても、本来は人間の姿がそこにあるべきだと思います。こういう場の中でも、いくらか存在感をこれからも発揮してことができればと、そんなふうに思えた一日でした。