伊藤哲司の「日々一歩一歩」

ここは、茨城大学で社会心理学を担当している伊藤哲司のページです。日々の生活および研究活動で、見て聞いて身体で感じることなどを発信していきます。

文洋さんの旅

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 石川文洋さんといえば、ベトナム戦争の報道等でよく知られている報道カメラマンですが、かつて茨城大学で3回も集中講義をしてもらったことがあり、そのお人柄と社会を見つめる真摯な姿勢に、大きな刺激と影響を受けてきました。ここ数年はお目にかかる機会がなかったのですが、銀座ニコンサロンで写真展が開かれるということで、久しぶりにお会いすることができました。

 単にお会いするだけでなく、サイゴン戦争証跡博物館のヴァン館長が来日するにあたって、通訳できる人を紹介してもらえないかという依頼が事前にあり、上智大学に留学中のよく知っているフオンさんという留学生を紹介し、事前の打ち合わせにも立ち会いました。そして写真展でのトークショーに続いて、ヴァンさんを福島にご案内するという小さな旅に、フオンさんとともに同行させてもらうこともできました。1泊2日の短い旅で、福島各地を視察するというものではありませんでしたが、枯れ葉剤の問題と重ね合わせて放射能災害の問題を見るヴァンさんの姿にも触れることができました。2歳年上の彼女ともよく知り合えたことも、私にとって大きな財産になっていきそうです。

 文洋さんが話をすれば、多くの人が、その分厚い経験に基づいた話に耳を傾けます。ただ「各地の9条の会に行って話をしても、若い人が少ないですね」と文洋さん。今回の銀座ニコンサロンでのトークショーには、私が連絡を入れた日本ベトナム学生会議の若い学生たちが来て、手を上げて質問もしていたのがよかったなと思いました。若い人たちの関心をもっと、と私も思います。「学校で子どもたちに話をすると、子どもたちのほうが素直。大人たちのほうが悪かったりしますからね」とも、文洋さんは話していました。

 私もまだ見ていないのですが、「石川文洋を旅する」というドキュメンタリー映画がまもなく公開されます。現在76歳。80歳になったら、65歳の時に続いてもう一度徒歩で日本縦断をするとかしないとか。私と同い年の奥さんの桂子さんにそのことを直接聞いてみたら、「いやいや、そんなのダメですよ」と笑いながら文洋さんの身体を気遣っておられましたが、さて。

 今年はとくに海外取材は予定していないと聞きました。やはり以前ほどの活発さはなくなってきているようです。でも6月には、文洋さんと行く沖縄の旅が企画されているようですし、古くからの友達とゆっくりベトナムを縦断してみたいとも語っていまいた。まだまだ文洋さんの旅は続くのでしょう。

 私も50歳になりましたが、まだまだですね。見習ってしっかり地に足をつけ、自分の旅を続けていきたいと思います。